作品紹介

企画意図

本格的な冬の到来と歩調を併せるように新型コロナウイルスの感染が急増。命の選別や医療崩壊という言葉が毎日取り交わされ、医療機関のひっ迫が私たちの不安を大きくしています。そうした中でコロナ対応に追われる保健所もまた戦場さながらの状態になっています。しかし、保健所が新型コロナウイルス感染拡大防止にどのような役割を果たしているのか、その姿は目に触れることはなく、多くの人には知られていません。
住民のいのちと健康を守る公衆衛生は国の骨幹でもある「命の安全保障」ともいえる重要な課題です。この映画は新型コロナウイルスが私たちの生活を一変させた2020年春から今日の第3波感染拡大までの約10か月間を公衆衛生の最前線である保健所にカメラを据え、コロナ感染拡大防止に当たる保健師や公衆衛生医、他の保健所職員たちの奮闘と葛藤、苦悩をドキュメンタリーで描く中で、保健所機能の役割と今日的課題を見ていきます。

映画製作のきっかけ

住民の命と健康を守りたい!
この体験を後の感染症対応に生かして欲しい!
保健所でコロナ対応に追われる職員の悲鳴から製作は走り出した

映画をつくろうとしたきっかけは、第一波の感染拡大が起きたときに

保健所業務に従事した保健師たちの体験からでした。 
2020年2月から3月にかけて、「帰国者・接触者相談センター」が開設

された中野区保健所では電話回線も新型コロナウイルス感染症に対応

する保健師の体制も整わない中、感染を心配する区民からの電話が殺到しました。 
区では直ちに、区内の他の部署で働く保健師に保健所への応援勤務を

発令し、5名の保健師が急遽応援に駆けつけました。

応援の保健師は、日頃は区の包括支援課や区内にあるすこやかセンターで母子保健や高齢者の健康に従事はしていたものの、保健所勤務は

もとより感染症対応は初めての経験。
朝、保健所について荷物を置く間もなく、

鳴り響く電話の受話器を取る日々。
 しびれを切らした相手からは罵声を浴びせられ、カルテの様式も何も

そろわない中でひたすら頭を下げ、無我夢中での応対が続く。

帰宅は毎日深夜。土曜も日曜もない。

しかしSNSでは保健所非難の投稿が続発した。

「家に帰ってからも電話の音が耳からはなれず涙がとまらなかった」

との苦しい思いを吐露するものも。

常勤の保健師たちは日常業務も重なってさらに忙しい。

それは戦場さながらの緊迫した状態が続いた・・

そうした中から生まれた思い

これまで体験したことのなかった危機的状況に、誰からともなく「この体験を雲散霧消させることなく記録に残しておかなければ」との

思いが募り、映像による記録が提案されました。 

関係者と製作者の思いが一致

その後、度重なる打ち合わせを重ね、スタッフのクルーを組み、実際に撮影がスタートしたのは6月に入ってから。

それは新緑が眩しいころでした。その後猛暑のなかで、秋の訪れを肌で感じながら、そして冷たい冬の風に身を縮めて…

追い打ちをかけるように更なる感染拡大の波が

2021年に入った今、感染拡大の第三波が押し寄せ、感染拡大の波は止まらない勢いで進んでいます。そんな中、マスコミで連日報道される重症患者の増加による医療崩壊の危惧どころか、ベッド不足が深刻な現実問題になってきました。

1月8日、政府は2回目の緊急事態宣言を発出し対策に乗り出しました。

この年末年始にかけての保健所では、みんな暮れも正月も休日返上。急増する陽性患者の数の多くに第一波の時以上の緊張した状態が続き、深夜にかけても作業は終わらず、その日に終わらせなくてはいけない疫学調査も積み残すありさま。終わりの見えない悪戦苦闘にみんな疲労困憊です。

果たしてこの状態がいつまで続くのか?

現在進行形でコロナに立ち向かう姿を追う

これまで災害現場など健康危機時に保健師等が活躍する映像は数多くつくられてきました。しかしそれらは、ある程度事態が収束したのちに過去を振り返る映像が殆どです。社会的には保健所機能のひっ迫が心配され、機能強化が緊急の命題になっている今、現在進行形で、関係者の生の声と姿を通して描きます。そして多方面からこの貴重な映像に対する期待が寄せられています。完成は2021年7月を予定しています。

映画の対象

一般

医療・看護・保健・福祉関係従事者及びその学生

その他